転換期を生きる〜日本のリハビリテーション専門職の現状と未来〜

【将来・お金のこと】

こんにちは!

「日本のリハビリ業界、これからどうなっちゃうの?」「お給料は上がるのかな…」なんて、モヤモヤした気持ちを抱えているリハビリ専門職の方、少なくないんじゃないでしょうか。

国の方針はコロコロ変わるし、なんだか先が見えなくて不安になりますよね。

この記事では、そんなあなたのモヤモヤを少しでもスッキリさせるために、公的保険制度のウラ側から、リハビリ専門職の未来まで、ちょっと違った視点でのぞいてみたいと思います。

明確な答えはないかもしれませんが、「なるほど、そういう考え方もあるのか!」と、少しでも気持ちが軽くなるヒントが見つかれば嬉しいです。

「診療報酬アップ!」の裏で起きている、ちょっと困った話

リハビリ業界でよく聞くのが、「診療報酬が改定されて、点数が上がったぞ!」というニュースです。

診療報酬というのは、リハビリをしたら病院や施設が国からもらえるお金のことです。これが上がると、一見「やったー!評価されたー!」って思いますよね。

とはいえ、本当に手放しで喜べる状況なのでしょうか?

実は2024年の改定では、回復期リハビリテーション病棟の入院料(基本的な入院費のようなもの)は確かに上がりました。

でも、その裏で「体制強化加算」みたいな、これまでもらえていたボーナスポイントがいくつか廃止されてしまったんです。

これって、例えるなら「基本給は上げてあげるけど、ボーナスはカットね!」と言われているようなものかもしれません。

しかも、「運動器リハビリは1日6単位までね」と、一部で上限が引き下げられました。これは「たくさんリハビリしても効果が頭打ちになるなら、その分、質の高いリハビリに集中してね」という国のメッセージだと考えられます。

結果として、病院によっては「あれ?点数上がったはずなのに、トータルだと収入が減っちゃった…」なんていう、笑えない事態も起きているようなんです。

なんだか、アメとムチを使い分けられているような、複雑な気持ちになりますよね。

目指すは「量より質」の時代。でも現場は…

国が「これからは量より質だ!成果を出してくれ!」と言いたい気持ちは、痛いほどわかります。

日本の人口はどんどん減っていて、社会保障のお財布も厳しくなっていますから。

だからこそ、「FIM」という、患者さんの日常生活の自立度を測る物差しを使ったり、「LIFE」というシステムにデータを送ったりして、「私たちのリハビリは、ちゃんと成果を出してますよ!」と証明することが求められるようになりました。

これは、リハビリの効果を「見える化」して、国民の税金を無駄にしないための、とても大切な取り組みです。

でも、現場で働く私たちからすると、「また書類仕事が増えるのか…」とか「データ入力に追われて、患者さんと向き合う時間が減るんじゃないか…」なんて、不安に感じてしまうのも正直なところですよね。

理想と現実のギャップに、ため息が出ちゃうこともあるかもしれません。

介護の現場では「暮らしを支えるリハビリ」へ

病院での治療が終わると、今度は「介護保険」の世界が待っています。

ここで求められるリハビリは、病院でのリハビリとは少し目的が違います。

昔は「とにかく筋トレ!歩く練習!」といった機能回復が中心でした。でも今は、「その人らしく、地域で楽しく暮らし続けること」を支えるのが、リハビリの大きな役割になっています。

「機能回復」だけがゴールじゃない

2015年のルール変更で、リハビリの考え方がガラッと変わりました。

「腕が90度上がる」ことだけを目指すのではなく、「その腕で、大好きな趣味の編み物ができるようになる」とか「近所のスーパーまで、一人で買い物に行けるようになる」といった、具体的な生活の中での目標が大切にされるようになったんです。

これって、当たり前のようで、実はすごく大きな変化ですよね。

おじいちゃん、おばあちゃんが一人で暮らす世帯が増える中で、リハビリ専門職は単に身体を動かす先生じゃなくて、その人の「生きがい」を一緒に探すパートナーみたいな存在になってきているのかもしれません。

「科学的介護」って、なんだか難しそう?

そしてここでも出てくるのが「科学的介護」というキーワードです。

2024年のルール変更で、「LIFE」というシステムに「うちの施設では、こんなリハビリをして、利用者さんはこんなに元気になりましたよ!」というデータをしっかり提出しないと、もらえるお金が減ってしまう仕組みになりました。

これも、提供するサービスの質をちゃんとデータで示しましょう、という国の考えの表れです。

さらに、「リハビリ」「お口のケア」「栄養管理」をセットで考えましょう、という動きも強まっています。

例えば、リハビリで体を動かす元気があっても、うまく飲み込めなくて食事がとれなかったら、元も子もないですよね。だからこそ、いろんな専門家がチームを組むことが、ますます重要になってきているんです。

お給料と働きがい、私たちのリアルな悩み

さて、ここからは、私たちにとって一番気になる「お金」と「働きがい」の話です。

リハビリ専門職って、人の役に立てる素晴らしい仕事です。でも、やっぱり生活していくためには、お給料も大事ですよね。

理学療法士(PT)は増えすぎ?言語聴覚士(ST)は引く手あまた?

最近、こんな話を聞いたことはありませんか?

「理学療法士(PT)は養成校が増えて、ちょっと供給過剰気味らしいよ」と。

実際、PTの数はこの10年で5万人以上も増えています。需要もあるのですが、なり手も多いため、残念ながらお給料が上がりにくい構造になっている、という見方もあるようです。

一方で、「言語聴覚士(ST)」は、状況がまったく違います。

高齢になると、食事を飲み込む力(嚥下機能)が落ちたり、言葉が出にくくなったりする人が増えます。まさに、STの専門分野です。

でも、STの数はPTや作業療法士(OT)に比べてまだまだ少なく、まさに「引く手あまた」の状態。有効求人倍率(求職者1人に対して何件の求人があるかを示す指標)は4倍以上というデータもあり、需要が供給を大きく上回っているんです。

これは、STの市場価値が高いことを示していて、今後の給与アップも期待できるかもしれません。

平均年収、他の仕事と比べてどうなの?

ぶっちゃけた話、リハビリ専門職の平均年収は、全産業の平均と比べると、少し低い傾向にあるようです。

例えば、理学療法士の平均年収は約433万円。全産業の平均が約507万円なので、その差は小さくありません。

これは、公的な保険制度のもとでは、私たちがどれだけ頑張っても、もらえる報酬に上限がある、という構造的な問題も関係していると私は思います。

2024年には、医療職の賃上げのために「ベースアップ評価料」という新しい仕組みもできましたが、これで状況が劇的に変わるかというと、まだ何とも言えないところです。

経験を積んでもお給料が頭打ちになりやすい…。そんな現実に、モチベーションを保つのが難しいと感じる瞬間があるのも、無理はないですよね。

「保険だけ」じゃない!広がるリハビリの新しいステージ

「公的保険のルールは厳しいし、お給料も上がりにくいし、もうやってられないよ…」

もし、あなたがそう感じているなら、少しだけ視点を変えてみませんか?

実は今、病院や施設という「枠」を飛び出して、新しいステージで活躍するリハビリ専門職がどんどん増えているんです。

急成長する「自費リハビリ」という選択肢

その代表格が、「自費リハビリ」です。

これは、公的保険を使わずに、全額自己負担で受けるリハビリサービスのことです。

保険には「病気になってから180日まで」といった厳しい日数制限があります。でも、患者さんからすれば「もっとリハビリを続けて、良くなりたい!」と思うのは当然ですよね。

そんな「リハビリ難民」とも呼ばれる人たちの受け皿として、自費リハビリの市場が急速に拡大しています。

料金は1時間1万円前後と安くはありませんが、最新のロボットを使ったり、経験豊富なセラピストがマンツーマンでじっくり関わってくれたり、その内容はとても魅力的です。

この分野は、専門職にとって、自分のスキルを高く評価してもらえるチャンスの場でもあります。

とはいえ、高額なサービスを受けられるのは、経済的に余裕のある人に限られてしまうという「リハビリ格差」の問題も生まれています。これは、社会全体で考えていかなければならない、大きな課題だと感じます。

あなたの専門知識、もっと違う場所で活かせるかも?

活躍の場は、自費リハビリだけではありません。

地域の健康づくり:
公民館で開かれる「介護予防体操教室」で、おじいちゃんやおばあちゃんに正しい運動を教える。これも立派なリハビリ専門職の仕事です。地域に溶け込んで、みんなが元気に暮らすお手伝いをする、なんだかワクワクしませんか?

学校の先生として:
特別な支援が必要な子どもたちが通う「特別支援学校」で、その子の身体や生活に合わせたサポートをする。文部科学省も、こうした専門家の配置に力を入れています。子どもたちの未来を支える、とてもやりがいのある仕事だと思います。

会社員の健康を守る:
最近よく聞く「健康経営」。これは、社員の健康を守ることが、会社の成長にもつながる、という考え方です。デスクワークで腰痛に悩む社員のためにエクササイズを考案したり、メンタルヘルスの相談に乗ったり。あなたの知識が、働く人たちのパフォーマンスを支える力になるかもしれません。

テクノロジーは敵か?味方か?

「AIやロボットに仕事が奪われるんじゃないか…」

そんな不安を感じる人もいるかもしれませんね。

でも、私はテクノロジーは私たちの「強力な味方」になると思っています。

例えば、リハビリロボットは、単調な反復練習を正確に、飽きることなく手伝ってくれます。その間に、私たちは患者さんの心のケアをしたり、より専門的な評価をしたり、人間にしかできない仕事に集中できるんです。

また、スケジュール管理やデータ共有のシステムを使えば、面倒な事務作業が減って、業務がぐっと効率的になります。

テクノロジーを上手に使いこなすことで、私たちはもっと質の高いサービスを提供できるようになる。私はそう信じています。

まとめ:変化の波を乗りこなし、未来の「頼れる専門家」へ

ここまで、日本のリハビリ業界を取り巻く、ちょっと複雑な現状と未来についてお話ししてきました。

国のルールは厳しくなるし、お給料の問題もある。でも、その一方で、自費リハビリや地域、教育、産業といった新しい活躍のフィールドが、どんどん広がっています。

これは、ピンチのようにも見えますが、私は大きな「チャンス」だと捉えています。

これからのリハビリ専門職に求められるのは、一つの場所に留まるのではなく、変化の波を柔軟に乗りこなしていく力なのかもしれません。

自分の専門性を磨き続けることはもちろん、他の専門家と積極的にチームを組んだり、新しいテクノロジーを学んだり…。

そうやって、自分自身の価値を高めていくことで、私たちはこれからも「社会に不可欠な、頼れる専門家」として、多くの人の人生を支え続けることができるはずです。

この記事が、あなたのモヤモヤを少しでも晴らし、「よし、明日からまた頑張ろう!」と思える、小さなきっかけになったなら、こんなに嬉しいことはありません。

参考元

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  3. 厚生労働省. 地域包括ケアシステム. (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/)
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  9. POST. PT・OT・STの単位数とは?リハビリの点数や算定上限、制度の課題を解説. (https://1post.jp/3691)
  10. (※元記事に番号はあるが引用元がないため省略)
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  14. POST. 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違いとは?仕事内容や働く場所、給料を比較. (https://1post.jp/35)
  15. POST. 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士国家試験の合格率推移|2024年版(第59回). (https://1post.jp/3041)
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